自分の車の修理に車両保険を使うと、翌年度から保険料が上がります。「使った方が得か、使わない方が得か」は、多くの方が悩むポイントです。判断の考え方を整理します。
1. 車両保険の基本
車両保険は、自分の車の損害を自分の保険で補償するものです。補償範囲の広い「一般型」と、単独事故などが対象外となる「エコノミー型(車対車+A)」があり、契約内容によって使える場面が異なります。また、契約時に定めた免責金額(自己負担額)が差し引かれます。
2. 使うと等級が下がる
車両保険を使うと、多くの場合「3等級ダウン事故」として扱われ、翌年度から等級が3つ下がるうえ、一定期間は「事故有」の割増引率が適用されます。その結果、数年間の保険料の増加額が、受け取る保険金を上回ることもあります。
3. 使うべきかの判断基準
- 受け取れる保険金額(修理費−免責金額)
- 今後数年間の保険料の増加額の見込み
- 相手方からの賠償でどこまでカバーされるか(過失割合)
これらを比較して判断します。保険会社や代理店に、使った場合と使わない場合の保険料の試算を出してもらうのが確実です。
4. 相手からの賠償金との関係
同じ損害について、相手からの賠償と車両保険の両方を重ねて受け取ること(二重取り)はできません。先に車両保険を使った場合、保険会社が相手方への請求権を取得(代位)します。過失割合に争いがあるケースでは、先に車両保険で修理を進めつつ、過失部分の回収を交渉するという使い方もあります。
5. 車両保険を使ったほうが得になりやすいケース――過失があり相手が高級車の場合
過失割合が0対100ではなく(=自分にも過失があり)、かつ相手車両が高級車の場合には、車両保険を使用したほうがお得になるケースがあります。具体例で見てみましょう。
具体例
- 過失割合:自分30対相手70
- 自分の車の修理費:60万円
- 相手の車(高級車)の修理費:300万円
このとき、賠償のやり取りは次のようになります。
- 相手に支払う額:300万円×30%=90万円(通常は自分の対物賠償保険から支払います)
- 相手から受け取れる額:60万円×70%=42万円
双方に物損がある場合の精算方法には、双方がそれぞれ相手の損害額(過失割合分)を支払い合う「クロス払い」と、支払額と受取額の差額(この例では90万円−42万円=48万円)だけを一方が支払う「相殺払い」があります。
ここで注意したいのは、クロス払い・相殺払いのいずれにしても、自分の車の修理費60万円のうち相手から回収できるのは過失相殺後の42万円だけであり、残りの18万円は自己負担(手出し)になるという点です。
対物賠償保険を使うなら、車両保険の等級ダウンは実質ゼロ
相手が高級車で賠償額が大きい場合、相手への支払い(この例では90万円)を自己資金で賄うことは現実的でなく、対物賠償保険の使用は避けられません。そして、対物賠償保険を使うと、その時点で3等級ダウン事故として扱われます。
重要なのは、1回の事故で対物賠償保険と車両保険を併用しても、等級ダウンは1事故分(3等級)のままで変わらないという点です。つまり、対物賠償保険を使うことが決まっている以上、車両保険を併用しても保険料への影響は追加では生じません。それであれば、車両保険を使って手出しの18万円(免責金額を除く)もカバーしたほうが得になりやすいのです。
※等級や事故カウントの扱いは保険会社・契約内容により異なる場合があります。実際の判断にあたっては、約款や保険会社への確認をおすすめします。
よくあるご質問
Q. もらい事故(過失0)でも車両保険を使うと等級は下がりますか?
車両保険を使えば原則として等級に影響します。相手方の対物賠償で全額回収できる見込みがあるなら、車両保険を使わない選択も有力です。
Q. 弁護士費用特約を使うと等級は下がりますか?
弁護士費用特約の利用は、一般に「ノーカウント事故」として等級に影響しません(契約内容をご確認ください)。物損のみの事故でも利用できることが多く、実質負担なく弁護士に依頼できる場合があります。